海外安全情報マニュアル

緊急事態対策

緊急事態とは

世界の国の中でも日本は、台風や地震などといった自然災害を除けば、紛争、暴動、クーデター、テロのような大きな事件のない平和な国です。しかし、海外では平和を求める人々の願いとは裏腹に、世界各地で毎日のように紛争や暴動などの悲惨な事態が発生しています。

さらに、2001年9月11日に米国で発生した「同時多発テロ事件」に象徴されるように、これまで比較的安全といわれた国でも大きな事件が起こっています。これに自然災害を加えれば、まさに世界中どこでも重大な緊急事態に直面しているといっても不思議ではありません。

こうした国際社会の中で、日本人が海外で緊急事態に遭遇した際、どのように自分の身を守るかが大切になっています。自然災害という面では、日本は防災先進国でもあり、海外においても国内における日ごろの行動方針が有効ですので、ここでは主として政治的・経済的・社会的な側面に起因する事態を取り上げます。

海外で緊急事態に遭遇したら

ホテルで遭遇した場合

現地関係者からの連絡や報道で、緊急事態の発生を知った場合には、まず電話などで自分の存在を最寄りの日本大使館か日本総領事館に知らせましょう。その際、電話がかかりにくい、使えないといった理由で安否を知らせられない状況も考えられますが、その場合は不用意に移動せず、その場に待機することが賢明です。

ホテルの中で待機する際は、興味本位で窓の外の状況をみるといった行動は絶対に避け、窓を閉め、明かりを消すなど、ガラス窓から離れるなど出来るだけ安全な状態・場所で待機することを心がけてください。

外出中に遭遇したら

外出中に、自分の近くでテロ事件や暴動に遭遇した際、かなり混乱した状態が予想されます。このような場合は、決してパニックにならず、群衆に近づかないようにし、早く安全な場所に退避することが大切です。

好奇心で騒乱の場に出向くような行動は絶対にとってはいけません。
中・長期の滞在者の場合の心得

テロはともかく、時期は不明ながらもいずれ社会的な騒乱などがあるかもしれないと思われる場合は、緊急時に備え、平素より次のような用意をすることをおすすめします。

――必要最小限のものをスーツケースかバッグにまとめ常時持ち出せるようにしておく。
――10日間程度の生活費と周辺国などへの移動に必要な現金、オープンエアーチケット(航空券)を手元に確保しておく。
――10日分程度を目安に食料、飲料水、医薬品、燃料など非常用物資を備蓄しておく。
――ナイフ、ローソク、懐中電灯、マッチ、缶切りなどサバイバル用品を準備しておく。
――車の整備に心がけ、日ごろから燃料は満タンにしておく。
――できる限り複数の連絡体制がとれるよう携帯電話と充電済みの予備のバッテリー、FM受信可能な携帯ラジオ、連絡先表のチェックを行う。
――早めに帰国か転居する場合には、日本大使館あるいは日本総領事館へ提出した在留届につき帰国(転居)届を行う。

在留届の提出を

現地の日本大使館あるいは日本総領事館は在留邦人や日本人旅行者に対して、情勢や安全確保のために必要な情報を随時提供しています。
このような情報を確実に得るためには、最寄りの日本大使館あるいは日本総領事館への在留届が必要です。3か月以上滞在する場合、在留届の提出は法律で義務付けられていますが、治安情勢が不安定な国や地域においては、3カ月未満であっても、出来る限り届け出るよう心がけてください。

届け出用紙は、外務省ホームページの「渡航関連情報」の「届出・証明」欄に記載されています。必要事項を記載の上、最寄りの在外公館に提出してください。

インターネットによる電子届出も可能です。住所などに変更があった場合や、帰国する際も届け出るように心がけていただく必要があります。

海外で日本人がどのような事故・事件に巻き込まれているか、そのためにはどのような対策が必要なのか、そして防犯や危機管理に対する意識のあり方について、よく理解して頂けたと思います。
実際に海外のさまざまな国・地域を訪れ、海外生活に触れると、このマニュアルでは挙げていないトラブルにも遭遇する可能性があります。そのようなときでも、繰り返し述べているように「自分の身は自分で守る」という基本を忘れずに行動すれば、多くの危険は回避できるはずです。困った時こそ最も頼りになるのは「自分自身」であることを常に思い返して下さい。
それでも万が一、事故・事件に巻き込まれた場合には、躊躇なく最寄りの日本大使館あるいは日本総領事館に連絡されることをおすすめします。