海外安全こぼれ話

2014.2.27
大日方和雄監事
誘拐か強盗か

海外に行くと思わぬ事に出会いびっくりしたり、困惑したり、楽しみはたえない。

誘拐(kidnapping)は割に合わない犯罪である、というのが定説になっている。確かに、身代金をとるためには被害者の関係者と接触しなければならず、その時に逮捕される可能性がたかくなるし、獲物を選ぶためにその家族や財産の状態を調べ、日常の行動パターンを把握するなど、準備に手間暇がかかる。おまけに相手に警戒されないよう準備は慎重に行わねばならない。(ああ、考えただけでうんざりだ。)そんなことで、手っ取り早くお金をとりたい者には不向きな犯罪である、ということになっている。

ところで、最近の中南米では「誘拐ビジネス」が流行っているという。これは従来型の誘拐とは違い、相手を調べるなどの手間暇はかけず、金がありそうな者をその場で選び、もっている金品をとった上、車などでATMへつれて行き、持っているキャッシュカードやクレジットカードで現金を引き出させて、それをもとるというものである。AMTを操作させるまでの短い時間拘束するので、short-term kidnapping とも呼ばれる。また、最近聞いたところでは、犯人は24時に近い時間帯において誘拐し、ATMで24時前に1回引き出させ、24時を過ぎたら(日付が変わるので)もう1回引き出させる、という。ATMで1日に引き出せる金額の上限が設けられているので、そのシステムに応じたわけで、引き出させてとれる金額はそれほど多くはないが、なにより安直で、犯人にとってより安全だし、敵もなかなか知恵が回るわい。

これは人の自由を束縛する点では誘拐であろうが、むしろ現代のシステムにそった強盗とも呼べる犯罪である。

犯行にあわないように注意するのが最善だがかなり難しい。キャッシュカードやクレジットカードを持たないのが1つの対策ではあろうが、それらを持たずに生活するのもなかなか難しい。そこで次善策として、携行するカードの枚数を減らすのはどうだろうか。日常はクレジットカード1枚のみとし、キャッシュカードは銀行で大金を引き出すときだけにする。これなら犯罪にあっても、被害額を多少は減らせよう。