海外安全こぼれ話

2014.6.24
理事 萩 隆之介
イスラム諸国でのラマダン(断食月)にご用心

6月の28日前後からイスラム諸国で約1ヶ月間にわたるラマダン(断食月)が始まる。この間、敬虔なイスラム教徒たちは、日の出から日没に至る間は一切の飲食を絶ち、水すら口にしないというイスラム教の行に服する。イスラム教徒たちは断食の励行により精神が高揚するとされる。しかし、断食を励行中の多くのイスラム教徒たちは、空腹と喉の渇きに耐えるため、活動力や思考力さえも鈍るというのが実態のようだ。従い、多くのイスラム教国では、ラマダンの間は、お役所の勤務時間を短縮するのが常だ。民間企業の場合は、日中の活動時間を短縮した分、日没後の食事を済ませた後、夜遅くにお客との商談を行うといったところもある。いずれにせよ、ラマダンの間は、商業活動が停滞しがちであり、また、その間にイスラム諸国に滞在する外国人も、日中は、人前で水も飲まず、ホテルの部屋でこそこそと食事をとるといった不自由な目に遭う。出来れば、ラマダン中のイスラム諸国への渡航は避けたいところだ。 今年のラマダンでもう一つ注意すべきは、サウジアラビアのメッカ巡礼にある。9月の巡礼月程ではないが、断食月にメッカに巡礼に行くイスラム教徒が多く、サウジアラビアもそうした人々に巡礼者用のビザを発給する。今年のラマダン中の巡礼で注意すべきは、サウジアラビアや周辺諸国で感染が広がっているMERSコロナウイルスの問題だ。世界中の国々から巡礼者がメッカに行き、母国に戻る。そうした巡礼者がサウジアラビアでウイルスに感染し、帰国後に発症するという事態が懸念される。企業としては関連情報に気を配るべきだろう。