海外安全こぼれ話

2014.4.30
監事 大日方和雄
人類の原初の楽しみ(いかさまトバク物語)

海外に行くと思わぬ事に出会いびっくりしたり、困惑したり、楽しみはたえない。

S君は行動的な若者で、海外に飛び出して行き現地の人々と気安く交われる性格である。大学の卒業もめどが立ち、学生時代最後の旅行として東南アジアへの旅に出た。

この国には何回も来ていて事情は分かっている。現地語も少し出来るし、現地人はみんな気が良いので楽しい旅行が出来るだろうと思う。空港のある大都市から少し離れた町に移動して宿を探しながら歩いていると、同年代の若者が寄ってきた。「日本人か」と聞くのでそうだと答える。「ああ、良かった。日本人を捜していたのだ。実は妹が近く日本へ技術研修で行くので日本の事情を聞かせて貰えないか。家まで連れて行くので、この車に乗ってくれ、今夜泊まっていってもいいよ。」と願ったり叶ったりの話。街中をしばらく走って一軒の家についた。「妹はちょっと出掛けてしまったようだ、すぐ帰ってくるからビールでも飲みながら待っていてくれ。」丁度喉も渇いているし、授業料の代わりにごちそうになるか。「妹の帰りが遅れているので、暇つぶしにトランプでもやらないか。やり方は簡単だよ。やあ上手いね、凄く強いし才能がある。これはかなわないや。そうだ、丁度隣にカジノで働いている男がきているので、彼を呼んでゲームをしよう。」そんなことで妹のことはどこへやら、男3人がトランプに夢中になってきた。「これまでは遊びだったが、これからは少し賭けてみようよ」となり、お金をかける。するとたちまちかなり勝ってしまった。「少し掛け金を上げよう。こっちは大負けだよ」と言われ、エーッと円との換算はいくらだっけ、レートは高いかな、でも断り切れない。最初はよかったのだが、やがて負けはじめ、「ツキが逃げたね、この次は勝つよ」とか慰められ、だんだん熱くなる。やがて気が付いてみたら、日本から持ってきたお金を全部やられていた。ここで取り返さなければ旅行も続けられない。カードで支払うからと信用借りしてゲームをやったが、勝ったり負けたり、結局大負けとなった。ATMまで車でつれてゆかれ、限度額一杯まで引き出したが負けた分には未だ足りない。持っていたカメラや時計を売り何とか支払ったが、負け金は100万円を優に超えた。

実は、相手となった現地人の男達はグルであって、2人がかりで「いかさま」をやっていたので勝てるわけはなかったのである。最初の勝ちは彼らがまいた餌であった。

賭け事は人類の原初の頃からの楽しみであるが、「いかさま」トバクによる負けは今も後を絶たない。ご本人にはお気の毒だが、高い授業料だったと諦めるしかない。